横丁文化は経済の発展に必要?人類の発展に求められるものは … – HOME’S PRESS(ホームズプレス)

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有名なラスコー洞窟の壁画。暗闇から芸術は始まった?

左から、生駒さん、港さん、竹村さん。人類の歴史、夜が芸術に寄与したことなど、様々な話題が披露された左から、生駒さん、港さん、竹村さん。人類の歴史、夜が芸術に寄与したことなど、様々な話題が披露された

前回の踊るケイザイNightレポート①では、風営法改正のポイントから夜の経済の効果について、トークの様子をお伝えした。3部構成のイベントのPart2のテーマは、「人類の発展と夜のカンケイ」。ファッション・ジャーナリストの生駒芳子さんをモデレーターに、写真家・著述家、多摩美術大学美術学部情報デザイン学科教授の港千尋さんと、文化人類学者で京都造形芸術大学教授の竹村真一さんをゲストに、トークが進められた。

人類が夜に活動を始めた歴史を振り返る時に話題となったのが、フランス南部にあるラスコー洞窟だ。

「ラスコー洞窟が発見されたのは戦後になってから。有名な壁画や彫刻が1万2千年~2万年も前につくられていたことに驚きを隠せないのですが、それが闇の中で生まれたということが色々なことを教えてくれるのではないでしょうか」と港さん。

「壁画を媒介にして自分が何か違うものになるとか、違う自分を経験するのか、そこでやっぱり人間の脳が進化し、心が進化したことで芸術を生み出した面もあるかもしれません。逆に洞窟という暗闇の空間があったからこそ、脳が進化したということもきっとあると考えています」(竹村さん)

竹村さんの発言を受けて港さんが続ける。

「そうだと思います。というのは洞窟芸術のもうひとつ特殊なところは、人間が描いたのに人間の像がほとんどないこと。猛獣が多い。人類最古の洞窟壁画で有名なフランスのショーヴェ洞窟ですが、3万年以上前に描かれたものですが、サイやライオン、ヒョウも出てきます。さらにマンモスのような動物も。熊にしても今の動物よりはるかに大きかったわけで、どんな動物も人間にとってはもう獣に違いない。そういう動物ばかりが出てくるんです」

それは昼間見て恐れたものに対して何らかの感情や宗教的なもの、神に近いような、何かを恐れる、敬う対象として描いていたのかと生駒さんが質問した。

「恐るべき対象というより、畏怖ですね。それは必ずしもリアリズムで描いているわけではなくて、動物の姿よりは動物的、アニマルと言いますか、生命力、何か自分よりも強い力をもった何かを体現する。そういうものを描くことによって、今そこにいない、見えないものに触れようとしていた。そんな気がします」(港さん)

火の発明と暗闇の発明は表裏の行為

「人類の発展と夜のカンケイ」。興味深い話に会場全体が引き込まれていた「人類の発展と夜のカンケイ」。興味深い話に会場全体が引き込まれていた

火の発明が夜を発明したとの考えも面白かったので紹介しよう。

「天文学的な意味での夜は昔からありましたが、火の発明が夜を発明したというのもたぶんあるでしょう。つまり我々が火を使えなければ夜の空間はただ暗いだけ。恐怖と休息の時間だった。火を発明したことで夜の時間が生まれた。そしてたいまつやランプを使いこなせるようになり、洞窟の中の本来は存在しない時空が人間の思考と経験の軸に初めてなったのです。火の発明と暗闇の発明は実は行為の表裏。火がなければ暗闇もなかった。人間の五感を動員してバーチャルリアリティをつくりあげ、脳も進化したのです。

人間は人間ではないものと同一化したり、逆にほかの生物の立場になって生物同士のつながりを想像したりできるという力があります。逆にいうと世界全体を自分の中に内包できるし、自分を世界の中に開放していける。この想像力のブロードバンド化みたいなものが、洞窟の暗闇から始まったのかもしれません」(竹村さん)

暗闇の話から写真の話、デジタルの話にも発展した。

「写真の本質は、フィルムの時と変わっていないと思います。逆に不便になったと感じています」と写真家の港さん。その理由を説明する。

「デジタルの前は、撮った写真をすぐに見れませんでした。そうするといったん忘れることができるのです。見れないというのが結構キモなのです。昔の写真というのはすぐに見れないので、小さな夜があるということですよね。フィルムのコマとコマの間がそうです。その間は見えないんです。撮った本人にも見えないんです。

つまり今のデジカメというのは昼ばっかりなんですよ。言うなれば昼間カメラ。自分で設定できて1ヶ月後にやっと見れるような、そういうアプリがあったら僕は買いたいですね」

24時間眠らない現代。どうすれば人類は夜を復活させることができるのだろう? さらに進化できるのだろう?

「冗談ではなくて、デジタル時代のデジタルを夜化しないといけないと思います。まだまだ昼間の思考でできているから。そういう意味では産業革命の時に発明されたガス灯から一直線なんじゃないでしょうか。ガス灯以前の時代の人間の付き合いをデジタル技術でどう表現して、我々の豊かさにつなげるか。デジタルの夜の時代はまだまだ先なんじゃないでしょうか」(港さん)

「人間は、自分の中の不自然をもっともっと抱いていくことで違う可能性を開いてきたところがあると思うのです。様々なものを活用しながら人間の違うチャネルを開いてきました。その延長で考えると、我々が使えるものはデジタルだけではありません。AIやIoTがもてはやされていますが、我々が違う形で進化していくという意味では、水商売のようなものも必要だと思うのです」(竹村さん)

ラスコー洞窟の壁画、暗闇から始まった芸術や脳の進化、産業革命、デジタルカメラなど様々な話題が提供され、「人類の発展と夜のカンケイ」が語られたPartとなった。

箱とコンテンツのマッチングが経済を潤す

左から、井上さん、山形さん、島原さん。箱(建物)とコンテンツの融合が経済の発展に欠かせないと説いた
左から、井上さん、山形さん、島原さん。箱(建物)とコンテンツの融合が経済の発展に欠かせないと説いた

Part3のテーマは、「街の文化とカネ」。株式会社ネクスト 代表取締役で、Next Wisdom Foundation代表理事の井上高志さんをモデレーターに、評論家、翻訳家で都市計画についての翻訳もある山形浩生さんと、株式会社ネクスト HOME’S総研所長の島原万丈さんをゲストに、トークが繰り広げられた。

まず、横丁的な文化と経済の関係性について意見が述べられた。ゴールデン街みたいな横丁は、ただの文化というだけで経済性の面ではどのように評価されるものなのだろう。

「決して横丁が文化だけで経済がないか、というとそんなことはないと思います。第1部の対談の中でも、これから日本はツーリズムの戦略を考えても夜の部分、特殊なコンテンツが面白いんだというようなことをおっしゃっていましたが、必ずしも横丁的なものが文化だけで経済と切り離されたノスタルジーではないんだと思っています」と島原さん。

さらに、都市計画の大切さについても言及する。

「『都市は人類最高の発明である』の著者のエドワード・グレイザーは、超高層ビルはそれで価値があると。1階さえ、ストリートが面白ければいいと言っています。ところが日本の高層マンションなり高層ビルをつくるときは、1階がことごとく死んでしまう。それは都市計画の制度の中に総合設計という下に空地をつくらなければいけないという制度があるからで、1階のストリートがまったく面白くなくなってしまう。ここにちょっとタワーマンション型経済の大弱点があります。タワーマンションは、おそらく建設業的な経済は生み出すかもしれないけれど、エンターテイメント型の経済には今の制度では具合がよくないのではないかと思います」

島原さんと同様、物理的な箱の問題を認める一方で、コンテンツの重要性が求められると山形さんは言う。

「例えば日本でコミケというイベントがありますが、1回の開催でひとつの街、大きなものでは市ぐらいの人口が集まってきて活動しています。ああいう活力というのは、別に東京ビッグサイトが偉いから成立しているわけではなくて、たまたまビッグサイトが箱としてあるだけ。建築も重要ですが、そこに入ってくるプログラムみたいなものをつくるのがもっと重要かと思います。一方で、プログラムをつくっても箱によってコンテンツがだいたい決められてしまうこともあるので、箱の設計も重要ですが、箱とコンテンツの組み合わせみたいなものがなかなか難しく、重要なのではないでしょうか」

人知はAIを超えられるか?これからの暮らしは?

AIによる都市の変化、都市づくりとかコミュニティづくりなどの話、都市でないと経済は成立しないのかについても意見が交わされた。

「少し前にインターネットが発達すると地理的制約がなくなるため、世界はフラットになるという論がもてはやされました。つまりどこにいても、同じ感動、情報を共有できる、と言われていました。実際にそれ以降都市への人口集積度はむしろあがっていて、AIでいろんなものが自動化されたとしても、おそらく次に求められるものは、AIを超えていこうとか、AIにはできないこと、妄想力とか想像力、人と人との触れ合いのような、予期せぬ、つまりプログラムが想定しないようなスキルが社会経済に求められるし、個人にも求められると思います。そういうものを個人のヒューマンパワー、ヒューマンスキルとして重視するならば、都市に行くことは非常に有効な生活条件なのだと思います」(島原さん)

都会と地方という視点からも島原さんが熱弁をふるった。

「地方の街づくりなどで面白いことが起こっている例があると、成功事例として仕組みばかりが注目されます。もちろん仕組みも大事ですが、結局それをやっているのはこの人だよね、みたいなものが結構多いですね。『この人』といってしまうと仕組みが真似できないので身も蓋もなくなるけれど、意外とそこは切っても切り離せない。誰かがいるってパターンがすごく多いと感じています」

山形さんからは、働き方についての提言が行われた。

「完全に昼夜逆転した人の生活もあっていいのではないかと。要するに我々が昼間働いているように反対に夜働く人もいる。そういう完全に逆転した対象です。我々が飲んで騒いでいる時に一方でまじめに働いている人がいて、逆に我々が昼飯食べている時に横でビール飲んでいる人がいる。全然違う時間軸の人たちが並んで生きているみたいな、そういう暮らし方がやれたら楽しいと思います」

風営法の改正によって、今まで空白の多かった夜の時間が有効に使えるようになる。時間×空間(使える空間が増える)ことで、かなり大きな経済効果が生まれるはず。また、魅力的なコンテンツが増えれば、ますます海外からの旅行客も増えるだろう。

コメントを中心に紹介したが、内容が濃く、また話題が多すぎて到底ここでは書き切れなかった。Next Wisdom Foundationではこのような学びにつながるイベントを随時開催しているので、ぜひ参加してはいかがだろう。生き方や働き方などのヒントが見付けられるのではないだろうか。

■Next Wisdom Foundation
http://nextwisdom.org/

■国立科学博物館 世界遺産ラスコー展
http://lascaux2016.jp/

トークセッション終了後はダンスタイムに。そこかしこで談笑する姿が見られたトークセッション終了後はダンスタイムに。そこかしこで談笑する姿が見られた

2016年 12月25日 11時00分






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