ロケ誘致大作戦 映像に乗って街を元気に – 東京新聞

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 映画やテレビドラマのロケを誘致し、地域おこしに生かそうという取り組みが活発になっている。“聖地巡礼”による観光振興はもちろん、地元で知られた名物を全国区にしようとアピールし、経済活性化ももくろむ。撮影には自治体だけでなく、住民たちも積極的に協力。ロケの追い風を一過性にしないアイデアを磨いている。 (藤浪繁雄)

 昨年十月、房総半島東部の千葉県いすみ市内で、テレビ朝日の人気ドラマ「相棒」の撮影が進んでいた。地元漁協の女性たちが出演者やスタッフに手渡していたのが、郷土料理「じあじあ」。サメなどの魚に野菜やみそを混ぜて練り、油で揚げたさつま揚げのような一品だ。

 撮影に協力した市の担当者は「(主演の)水谷豊さんや反町隆史さんも『おいしい』と言ってくれた」と喜ぶ。ただしドラマ中で、じあじあは登場せず「いつか食べる場面で使ってもらい、全国に広めたい」と意気込む。

 同市では二〇一五年秋、テレビ東京のドラマ「孤独のグルメ5」が撮影され、松重豊さん(54)演じる主人公がJR大原駅前の食堂で「ブタ肉塩焼きライス」を食べた。翌日から食堂は大盛況、今も遠方から訪れる客が少なくないという。

 同市はドラマの効果に手応えを感じ、民間とも連携してロケ誘致に本腰を入れる。ロケ地マップを作製したほか、じあじあをパンに挟んだ「じあじあバーガー」を試作し、新たな名物として売り出そうと画策する。

 いすみ市の手本となるのが、ドラマを機に「みしまコロッケ」が大ヒットした静岡県三島市だ。TBSで一四年に放送された連続ドラマ「ごめんね青春!」で、登場人物がコロッケを食べるシーンがたびたび登場。市内産のメークインで作ることがみしまコロッケの要件だが、これを目当てにファンが訪れ、売り上げも増加。今や中国・上海にも輸出されている。

 三島市ではさらに、行政と地元企業、市民が一体となって映画「惑う After the Rain」(林弘樹監督、佐藤仁美主演)を製作、二十一日の公開にこぎ着けた。ストーリーづくりからロケ地選びまで林監督と市民らが協議。製作費には、市の補助金のほか、地元企業の協賛金や市民の寄付も充てられ、市民有志も製作スタッフとして加わった。市の担当者は「ロケの誘致は(みしまコロッケなどの)経済効果は高いが、『惑う』は市民が関わりながら、自分たちの映画という思いを醸成できた」と意義を強調した。

◆地域活性へ官民連携

 ロケを誘致し、具体的に撮影場所を紹介するのが、自治体や観光協会がつくるフィルムコミッション(FC)だ。

 約百二十団体が加盟する全国組織の「ジャパン・フィルムコミッション」によると、一九九〇年代から各地でFCの設立が相次ぎ、現在は三百以上ある。しかし、中には「大作ではない」「地域に落ちるカネが少ない」などと市民の関心が薄く、実際に活動していないFCも少なくないという。

 自治体などに助言をしているのが民間企業「地域活性プランニング」(東京)。藤崎慎一社長(54)はB級グルメ「富士宮やきそば」を全国区にした実績があり、ロケ誘致では多くのドラマファンが訪れる神奈川県綾瀬市や、わさび丼が有名になった静岡県河津町を成功に導いた。

 藤崎さんは昨年、観光庁が音頭を取って設立された「ロケツーリズム協議会」の会長に就任した。各自治体や鉄道会社、ホテル、芸能事務所、映画会社の関係者らがメンバーとなり、ロケ誘致やマップづくり、ドラマの場面写真をマップで使う際の版権の交渉術などのノウハウを共有。藤崎さんは「ロケを誘致するだけでなく、地域活性化の仕組みを作りたい。雇用を生み、モノを売る。それが地域の活性化、プロモーションにもなる」と話している。

◆住民参加型映画はずっと残る

 映画「惑う」の林弘樹監督(42)は2003年に「ものがたり法人FireWorks(ファイアワークス)」を立ち上げ、各地の自治体と協力し、住民参加型の映画を手掛けてきた。映像の力による地域おこしの在り方を聞いた。

−今作での三島市民の役割は。

 多くの人が関わることを重視した。ストーリーも白紙、14年から何度も市民にヒアリングした。現場では食事の用意などのほか、製作にも広く参加してもらった。自分たちで作るという意識を強くしたと思う。

−製作の過程で心掛けたことは。

 「誰に届けるのか」ということ。市民とのやりとりから「家族」「生死」といった普遍的なテーマの物語になっていった。(昭和30年代ごろの)葬式や食事風景、作法なども聞いて描いた。日本のどの地域の人が見ても感じることの多い作品になったと思う。

−監督には地域おこしへの期待が大きい。

 名所の風景にこだわり、PR色を狙った「ご当地映像」になるほど失敗し、残らない。(法人設立から)15年目に入り、長編映画で5本、短編で15本ほど作ったが、最近は自治体からの依頼や相談も増え「一緒につくること」の意味も徐々に理解してもらえるようになった。

−住民参加型の映画づくりは時間もかかるが、今後も続けますか。

 この方法で作った映画はずっと地域に残る。その時に築いたネットワークやノウハウ、人材はすべて役に立つ。ただ、覚悟と責任は必要。映画のエンドロールに名が出ること、それは覚悟と責任、誇りを刻むことです。

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