体験時代のインバウンドとPR – 電通報

Home » インバウンド » 体験時代のインバウンドとPR – 電通報
インバウンド コメントはまだありません



春節の終わりと消費行動の変化―消費から体験へ―

春節休暇の後半戦となる2月は、特に中国インバウンド関係者にとって一つの山だったのではないでしょうか。一方、春節で訪れる中国人観光客の「爆買い」が従来ほど見られなかったという論調の報道も見受けられました。インバウンドの減速でしょうか?

実は、観光消費をめぐる質的な変化は、中国に限らずインバウンド市場全体の傾向でもあります。1月発表された観光庁の訪日外国人消費動向調査のうち、費目別の訪日外国人旅行消費額に目を向けると、多くの市場において飲食費と交通費の構成比が拡大し、買い物代の構成比が縮小しています。訪日旅行者が成熟するにつれ、具体的なお金の使い方が変わってきています。訪日旅行に求めるものが変化しているのです。

連載最終回の今回は、インバウンド旅行客が訪日するまでの行動をあらためて振り返りながら、各段階でPRの視点から考えるべきことを解説したいと思います。

段階1 ―① 旅行検討時期:情報の入手経路の変化

第2回、第3回の連載で中国の最新事情を紹介したように、ターゲットの情報入手経路は大きく変貌しています。これまでは主に旅行会社のウェブサイトや新聞広告、ガイドブックを見て、予算と休みに見合った旅行商品を探したり、行き先の情報を収集したりしていました。

そこで、旅行を検討している層に対して旅行の目的地やそのサービスとして選んでもらうことを目指し、雑誌やテレビを通じて情報を提供し、認知度を高める取り組みを行うとともに、接触する情報量を増やすコミュニケーションを考えてきました。また、第4回で紹介したように、地域資源を生かしながら第三者の「外から目線」でブランド力を高める必要があることをお伝えしました。

しかしソーシャルメディアの急速な拡大に伴い、ソーシャルメディアに友人が投稿した旅行写真を見て行き先を決めたり、インフルエンサーと呼ばれる人々と同じ体験をするべく目的地を決めたりといったように、情報入手経路の変化は、旅行先の検討プロセスの変化ももたらしています。

加えて、ひとたび行き先を決めた後も、オンラインの口コミで評判の良い体験やサービスを探す行動にぬかりはありません。訪日旅行経験者が増えたことによる口コミの質・量の充実、また自治体や観光当局による情報提供量の拡大によって、今や訪日前から日本旅行に対する情報を一定程度収集することが可能になっています。

一方で、「フェイクニュース」などが社会で話題になっている昨今、情報の受け手側も、情報の信頼性を気に掛けています。そこで、信頼できる情報源、つまりターゲットにとって信頼できるウェブサイトやインフルエンサーの役割、そして公式情報の役割は、ますます大きくなっているといえるでしょう。

引き続き地道なコミュニケーションが重要なことは言うまでもありませんが、こうしたターゲットの情報入手経路の変化(情報流通構造の変化)に対応し、ターゲットにとって受け入れやすいように、コンテンツや情報発信のタイミングを整える、コミュニケーション設計の進化が求められています。

段階1 ― ② 旅行検討時期:「フォトジェニックな体験」「ソーシャルメディア映えする体験」を求めて

もう一つ、特に若い世代にとって、旅行検討時期に大きく影響を及ぼす変化があります。リピーターに限らずビギナーも、単に名所旧跡を巡る旅行スタイルから、体験内容を重視するスタイルに変貌していることです。

そして、それにとどまらず、ソーシャルメディアで楽しんでいる姿を発信することが、もはや切っても切り離せない旅の目的の一つになっています。従って、旅行先やサービスを検討する際には、「どんな写真が撮れるのか」「ソーシャルメディア映えするか」が大変重要な要素となっているのです。

そこで、思わず写真に収めたくなるような絶景はもちろん、フォトジェニックなカフェ、街角の風景、他ではできない体験の一コマ…そういったフォトスポットを事前に創出し、どんな写真を撮れるか、イメージしやすいように整えておくことが、重要な旅の決め手となります。

段階2 滞在中: ソーシャルメディアでのリアルタイム発信

そうしたターゲットは、滞在中は携帯電話を肌身離さず持っており、次から次へと自撮りした写真や動画を発信していきます。中には投稿が24時間で消えてしまうアプリを活用した発信もあります。そして発信にはタグをつけ、ソーシャルメディア内でのコミュニケーションを楽しみます。旅をきっかけに、仲間や友人とのリアルタイムなコミュニケーションをも楽しんでいるのです。

しかし、時にはこういった撮影がトラブルを引き起こすこともあります。事前に課題や対応方法を可視化し、関係者間のインターナルコミュニケーションを促進することで、受け入れ側にもストレスなく情報の発信・共有を楽しんでもらうことが、持続可能なインバウンドの推進につながります。

段階3 帰国後:ブログやソーシャルメディアでのストーリー発信

帰国後、写真や映像系のソーシャルメディア映えするコンテンツとは別に、記憶に残るストーリーやエピソードがそれぞれのブログやソーシャルメディアを通じて発信されます。具体的には、泊まった場所や観光施設での地元の人との触れ合い、感動したサービスなどです。

裏を返せば、思わず他人に語りたくなる体験やサービス、他とは違う感動を仕掛けることができれば、投稿してもらえる可能性、そしてその投稿を読んだ潜在的な訪日旅行客に拡散してもらえる可能性が高まるといえるでしょう。

ここで気を付けたいのが、訪日旅行客の国籍や年齢、性別やライフスタイルによって、また旅行経験の習熟度によっても、「刺さる」体験やサービスが異なるという点です。例えば年配の中国人旅行客の方の中には、冷たいお茶を文化として飲まない方々がいます。暑いからといって冷茶を出しても、日本人ほどには喜ばれないのです。

日本人目線で「これをやったら喜ばれるだろう」「きっとこういうものが好きに違いない」と思い込み過ぎず、とことんターゲット目線で考え、またその視点を、実際にサービスに携わる人々と共有する仕組みを整えることが重要です。

最後に:訪日2000万人時代を見据えて

全5回にわたりお読みいただき、ありがとうございました。2019年ラグビー・ワールドカップ杯、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会を控え、日本のインバウンドはさらなる発展が見込まれます。

また、今回の連載で取り上げたレジャー分野以外にも、MICE(Meeting/会議・研修、Incentive/招待旅行、Conference or Convention/国際会議・学術会議、Exhibition or Event/展示会)関連分野、日本でも本格的な議論が開始されたIR(カジノ統合型リゾート)など、インバウンドの裾野も拡大しています。

PR視点を加えることによって従来の取り組みがさらに洗練され、ターゲットに対し地域や企業の努力が今以上に的確かつ戦略的に伝わり、目指す効果が得られれば、こんなに喜ばしいことはありません。また、コミュニケーションの行き違いによるボタンの掛け違いが、PR視点を導入することで減少し、インバウンド全体を盛り上げることに寄与できれば、大変幸いです。






コメントを残す