福島米、ふるさと納税で完売 最年少農家「うちは特殊」 – 朝日新聞

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 東京電力福島第一原発から30キロ圏内に位置する福島県広野町。地元産コシヒカリをふるさと納税の返礼品にしたところ、予定の1千件が「完売」した。広野産の米が全国の食卓にあがる。

 「味は負けない。よそのブランド米を食べても、たいしたことない」。町内の米農家で最も若い横田和希さん(36)は遠慮がない。震災後、農業を断念したり、避難して米づくりができなかったりする農家から田んぼを任され、作付面積は町内最大の24ヘクタールになった。

 「米の選別作業は2回もやる。うちは特殊なんすよ」。いま、風評被害は「ない」と言い切る横田さんだが、町が米の作付けを再開した2013年、米作りが盛んな福島・会津地方の農家に「毒米を作るから福島のイメージが悪くなるんだ」とぶつけられたこともあった。だが、横田さんは相手の気持ちも分かるという。「逆の立場だったら同じことを言っていると思う」

 町では作付けを再開してから放射性物質濃度を調べる「全量全袋検査」をしている。国の基準値(1キロあたり100ベクレル)も下回っていた。

 しかし、町の担当者は「農協に米を出しても、広野町がある双葉郡産は原発が近いこともあって最後まで残っていた」。そんな状況が13年、14年と続いた。「農家を支援したい。おいしい米だから町が直接、届けよう」。町では15年度からふるさと納税の返礼品に充てることにした。検査も継続しており、15年産、16年産の米から25ベクレル以上検知されたことはない。

 贈られるのは福島県のガイドラインに沿って農薬の使用を抑えた特別栽培のコシヒカリ。3万円の寄付で60キロ分と、地元産大豆を使った無添加みそが届く。初年度は696件と目標の1千件には届かなかったが、2年目となる今年度は4カ月かからず1千件に届き、早々に受付を終了した。

 今年度初めて、返礼品として2100キロのコシヒカリを出荷した高木親男さん(75)は「努力を重ねて作った米がうまいと自信が持てた」と話す。

 町全体の作付面積は13年の100ヘクタールから16年には160ヘクタールに増えた。ふるさと納税の返礼品需要に加え、廃炉や除染に携わる作業員の宿舎などで消費されるようになり、米余りは少しずつ解消されてきた。町は農協に出荷するよりも高い価格で米を引き取っているが、「自分の米が高く売れる場合はふるさと納税に協力しなくても大丈夫です」と呼びかけている。

 実は横田さんも自分のルートの方が、60キロあたり1千円ほど高く販売できる。しかも、農協と違って返礼品として出荷する場合は精米する必要があり「ぶっちゃけこれがつらい。腰を痛めた」。それでも、今年度は返礼品用に4200キロ納めた。なぜなのか。

 「広野町ってあまり知られていない。お米を食べて名前を知ってもらい、多くの人に広野町に来てほしい」

 童謡「とんぼのめがね」は、町で開業していた内科医が往診途中にみた情景をもとに作詞された。全国的に有名な米どころではないが、春先の青々とした早苗、黄金色に輝く稲穂は広野の原風景として人々の心に刻まれている。

 「おれだけじゃなくて、みんな生き残った精鋭。みんなで頑張っていくことが大事なんすよ」。町内最年少の農家は腰を据えて米づくりと向き合っている。(向井宏樹)






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