一軒家からオフィス&シェアハウスへ~福岡「茶山ゴコ」の次世代に資産を残すためのリノベーション~ – HOME’S PRESS(ホームズプレス)

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空き家の活用、撤去を促す対策が急務の地方都市

平成25年に発表された住宅・土地統計調査によれば、国内の住宅総数に占める空き家の割合は、2013年10月時点で過去最高の13.5%になっている。戸数についても過去最多の820万戸と、人口減少が深刻な地方を中心に増え続けている。また、空き家を取り壊すことによって税の負担が重くなる制度も空き家が増える原因の一つとして捉えられており、住居の活用、もしくは撤去を促す対策が課題となっている。

こうした地方の空き家増加の状況は、九州地方で最も人口が多い福岡県も例外ではない。

福岡県は、これまで全国でも数少ない人口が増加している県だったものの、64歳以下人口の減少、65歳以上人口の増加によって世帯数が減少すると予測されている。また、平成25年の時点で約32万戸の空き家(空き家率12.7%)が存在しており、将来的な空き家の増加は免れない状況と言えるだろう。

活用可能な空き家の利用を促す「空き家バンク」の開設や、2017年2月現在、国家戦略特区である東京都大田区と大阪府(政令指定都市および中核都市の37市町村)で実施されている民泊など、中古住宅の活用や流動化がますます求められる中、地方における空き家活用の一例とも言える物件が、福岡市城南区茶山にある、「茶山ゴコ」だ。

空き家数と空き家率の推移 出典:「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)空き家数と空き家率の推移 出典:「平成25年住宅・土地統計調査」(総務省統計局)

次の世代まで”資産”として残したいという思い

もともとは個人宅だった物件だが、オーナーの子どもたちが独立したことやオーナー自身の高齢化を理由に手放そうとしていたという。しかし、50年分の家族の思い出が詰まったこの家を、”次の世代まで資産として引き継いでいきたい”という思いもあり、冷泉荘など福岡を中心に老朽ビルの再生を手掛ける株式会社スペースRデザイン(以下、スペースRデザイン)に相談を持ちかけた。

当初は一軒ごと借家として運用する方法が検討されたものの、戸建てを借家にした場合の相場は月に10万円以下と、大きな収益は見込めないことが分かった。そこでスペースRデザインが物件を借上げ、一戸建てそのままではなく、1階を3戸のシェアハウス、2階を2戸のオフィス・アトリエとしてサブリース、満室時に約25万円を見込む「ワーク&シェアハウス」としてリノベーションすることにした。

建築基準法上、住宅をホテルや店舗に変更する場合用途変更が必要になるが、その用途に供する部分の床面積の合計が100m2に満たない場合は、この用途変更の手続きが不要となる。そのため、シェアハウスは、100m2に満たない1階部分のみに留め、建物の構成的に1階と2階を切り離し、室内へのアクセスはそれぞれが独立した状態になっている。

2階のアトリエに繋がる鉄骨の外階段が大きなインパクトを放っている。1階の駐車場側は採光性を保ちつつ、木塀を設置。塀としての機能だけではなく、プランターを掛けられるようにするといった拡張性も考慮されている<BR />(写真提供:株式会社スペースRデザイン)2階のアトリエに繋がる鉄骨の外階段が大きなインパクトを放っている。1階の駐車場側は採光性を保ちつつ、木塀を設置。塀としての機能だけではなく、プランターを掛けられるようにするといった拡張性も考慮されている
(写真提供:株式会社スペースRデザイン)

次の世代に”資産”として建物を残すための投資

このリノベーションで大きなポイントとなるのが、間取りの改修など家自体の改修に対する投資よりも、地盤改良などの補強に対する投資に重点を置いている点だ。

一見すると費用対効果に見合わない大規模な改修のようにも思えるが、資産の相続と考えると有効な改修であると、茶山ゴコの管理人でもあるスペースRデザイン梶原あきさんは語る。

「いずれ訪れる、相続という長期的な視点で捉え、将来的に家賃が上げられる可能性のあるリノベーションに投資をしてお子さんやお孫さんといった次の世代に資産として引き継いでいくことをご提案しました。瓦の屋根や縁側といった昭和に建てられた日本家屋の良さを活かすため、建替えをしなくとも、長くこの建物を残し、いかにこの建物の価値を上げていくか、この点を追求しました。この提案に対し、オーナー様からは、『地方都市における戸建ての再活用という社会的な課題に対する実験的な取組みに協力したい』とおっしゃっていただきました」。

外観は昭和の雰囲気を残しているものの、住居内は、無垢のフローリングや白を基調とした市松模様の琉球畳など、当時の住居の造りや佇まいを残しつつ、モダンな雰囲気になっている。

写真左:茶山ゴコの玄関部分。左に見える丸窓は、元々この住宅にあった造りを活かしている。<BR />写真右上:リビングは共用で使用するキッチンにつながっている<BR />写真右下:
1階部分のシェアハウス3戸のうちの一つ。畳が敷かれており、床の間なども残されたモダン風の住居だ<BR />(写真提供:いずれも株式会社スペースRデザイン)写真左:茶山ゴコの玄関部分。左に見える丸窓は、元々この住宅にあった造りを活かしている。
写真右上:リビングは共用で使用するキッチンにつながっている
写真右下:
1階部分のシェアハウス3戸のうちの一つ。畳が敷かれており、床の間なども残されたモダン風の住居だ
(写真提供:いずれも株式会社スペースRデザイン)

都心部ではなく、郊外の住宅街にオフィスを構えるメリット

写真上:茶山ゴコの2階部分。それぞれの部屋の広さは約15~16m2で賃料は月額3万5000円。3面採光となっており、非常に開放的だ<BR />写真下:Stemの屋外には、岩永さんがアレンジした作品が所狭しと並べられている写真上:茶山ゴコの2階部分。それぞれの部屋の広さは約15~16m2で賃料は月額3万5000円。3面採光となっており、非常に開放的だ
写真下:Stemの屋外には、岩永さんがアレンジした作品が所狭しと並べられている

2017年2月現在、2階のアトリエには、ハンドメイドの釣竿工房「FULL HANDS」、庭や花壇のプロデュースや多肉植物の寄せ植え教室をしている「garden produce Stem」の2つのテナントが入居している。

ビジネスを行う上で都心部ではなく、なぜあえてこの住宅街にオフィスを構えたのだろうか。Stem代表の岩永有理さんは、入居した経緯について次のように語る。

「植物を屋外で管理ができて、なおかつ、室内でも水や土が使える、体験教室などでお客様も入れるといった条件を満たす物件にはなかなか出会えませんでした。その中で、ここはその点をクリアしていて、バルコニーやお庭などの共用スペースをある程度自由に使えたり、釘を打つなど相談のうえで室内を自由にDIYしても良いことなどが理由で、見た瞬間に”ここだ!”と思えた物件でした」。

また、立地についても、郊外の住宅街にオフィスを構えることに不便さを感じることは少ないという。

「植物と向き合う場所でもあるため、ゆっくりとくつろげる雰囲気にしたかったんです。人通りが気にならない2階というのも気に入ったポイントです。今ではSNSを中心に情報を発信できるし、皆さんの移動手段も豊富なので、郊外でもまったく気になりませんでした。特に多肉植物が好きな方は、遠方の園芸店でも構わずに行く方も多いんです」と語る。

教室にやってくる生徒も、庭を持つ戸建て住宅に住む人が多く、その多くは茶山に住んでいることからも、賃料や利便性など総合的にみて都心部よりメリットを感じることが多いという。

この点については梶原さんも、「茶山ゴコのプロジェクトを通じて、オフィスの需要が必ずしも都心のアクセスの良い立地だとは限らないことが新たな発見でした」と、当時を振り返る。

暮らす目的は違えど、住人の個性が調和によって建物への愛着に変わる

茶山ゴコの管理人である株式会社スペースRデザイン梶原あきさん茶山ゴコの管理人である株式会社スペースRデザイン梶原あきさん

“ゴコ”という名称は部屋数でもある”5戸”に由来しており、それぞれの個性が集まって交流を楽しみながら、5人が自分の夢への一歩を踏み出せる場所、という想いが込められているという。

住居とオフィスが同じ住宅の中にあるものの、屋内には階段がなく、2階のアトリエ利用者は外階段を利用して直接出入りすることになる。シェアハウスの住民とアトリエの利用者との間で、どのような関係が築かれているのだろうか。

それぞれが住むため、働くためと茶山ゴコで過ごす目的は違うものの、同じ家をシェアして暮らす人同士、お互いの人柄を知るきっかけをつくったり、環境を整えているという梶原さん。

例えば、外階段のふもとにあるDIYでつくった花壇。住人とスタッフが協力して土を造り、岩永さんにガーデニングのアドバイスを受けながら管理をしている。また、庭に植えられているオリーブを収穫して食べるなど、近過ぎず遠すぎない、ちょうど良い距離を保てるように心がけているそうだ。

また、茶山ゴコでは3~4ケ月に1度のペースで、住人同士による食事会も開催しているという。

「住人さん同士、お互いの仕事や人となりを知ることで、たくさんの個性が集まる茶山ゴコという場所に対する愛着も湧きました」と岩永さん。

築50年を超え、住まい手を失った戸建て住宅がリノベーションによって、様々なライフスタイルが集う一軒家として、新しい価値を生み出す場所になった。
“次の世代へ資産として引き継ぎたい”というオーナーの願いから生まれた「茶山ゴコ」。地方が抱える放置空き家という課題に対し、プロジェクトから導き出される答えが解決の一助になるのだろうか。注目していきたい。

2017年 03月11日 11時00分






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