第2回 親元就農でブランドと地域農業を引き継ぐ – 農業協同組合新聞

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シリーズ:農業新時代! クローズアップ 日本農業経営大学校から羽ばたく若い力

2017.03.21 
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 日本農業の未来にとって不可欠なのは、言うまでもなく次代の担い手である。後継者の確保が各地で課題となっているが、同時に農業を職業にしたいと考える若者たちは確実に増えている。そんな若者たちに農業生産技術だけでなく、マーケティング、商品企画、経営計画など経営者としての能力を身に付け、地域のリーダーとしても活躍する人材を本格的に育成しているのが日本農業経営大学校である。このシリーズでは、同校で学んだそんな農業経営者を志す若者たちをレポートする。今回は富山県入善町の若手農業者の森下信義さん(25)を訪ねた。

◆入善ジャンボ西瓜 引き継ぐ4代目

(有)グリーン森下の森下信義さん(右) 左は父の和紀さん。後ろに広がるのは立山連峰 富山県入善町は黒部川扇状地として豊かな水に恵まれた農業地帯である。
 良質米生産のほか、「入善ジャンボ西瓜」が特産品で平成19年にJAみな穂が出願して地域団体商標(地域ブランド)として登録されている。
 黒部川流域が西瓜栽培に適していたことから、ジャンボ西瓜は明治30年ごろから始まり戦前は黒部西瓜として栽培が盛んだったという。その後、作付け転換が進んだが昭和40年代半ばから特産品として確立しようという取り組みが地域で始まり、その中心的な役割を果たしたのが、今回訪問した農業法人の(有)グリーン森下である。
 信義さんの父である代表取締役の森下和紀さんによれば、もともと森下家は代々、ジャンボ西瓜の栽培を手がけており、それを和紀さんの父が引き継いで地元ブランドとして確立した。和紀さんが就農し結婚して家族一丸で経営を続けるなか、平成6年に社会保障制度などもしっかり導入した経営体にしようと法人化し(有)グリーン森下を設立した。
 現在は水稲40ha、大豆30ha、入善ジャンボ西瓜70a、ハウスネギ10a、そして最近は100本近くのモモ栽培も加わったという。従業員は4名、アルバイトは2名。
 その従業員の一人が日本農業経営大学校を卒業し28年4月から就農した和紀さんの長男、信義さんだ。就農1年めから、入善ジャンボ西瓜の栽培を専門に担っている母のさゆりさんから栽培指導を受けた。「私の祖父から始まった西瓜栽培ですから4代目ということになります。歴史ある大事な特産品。しっかり残していってほしい」と和紀さんは話す。

◆ビジネスとして考える

 信義さんは地元の高校で農業科に進学した。和紀さんは無理に農業を継がせようとは思っていなかったというが、信義さんは「入善ジャンボ西瓜という特産品をもっと広めていきたいと考えました」と話す。高校卒業後は東京農大に進学。選んだのは国際バイオビジネス学科。農業そのものよりも、学ぶなら今はアグリビジネスの世界に触れたいと考えたという。
 そして大学4年生のとき、授業で日本農業経営大学校が2期生の募集をしていることを知らされる。東京で農業をどう勉強するのだろうかと同校を訪ねて講師陣の話を聞いて入学を決めた。
 「農業以外の視点から農業を見ることを重視していると感じました。東京だからこそ学べることですね」と信義さんはいう。
 実際、講義内容は多彩で強く印象に残ったのは広報宣伝業界のプロたちが、マーケティングや販売戦略を農業に当てはめた説得力ある講義で「農業をビジネスとして考えることができるようにならなければと思いました」。

   ◇    ◇

 研修1年目に研修先として選んだのは福岡県にある農業法人「オーガニック パパ ユニティ」。農業生産はもちろん加工品の販売も行っている。
 同社の存在を知ったのは実は大学時代に通っていた東京都内のあるカフェ。有機農産物などにこだわったメニューで、店主と知り合ううちに仕入れ先が同社であることを知った。それを印象深く覚えてきたことが日本農業経営大学校での研修先につながったということなる。
 同社はユニバーサル農業を掲げ、さまざまな障害や化学物質過敏症など問題を抱えた人たちの就労の場として、農福連携を実践しているという。少量多品目を生産し惣菜や弁当などの加工部門もある。研修ではほ場の管理と直売所などでの販売も体験した。
 有機農業を実践し1つひとつのほ場は小さいものの、当然、土づくりからこだわる。また、生産物の販売は、学生時代に偶然入った東京都内のカフェがそうであったように、志を同じくする企業との連携を重視して経営を展開していた。何よりも同社を立ち上げたのは農家出身者ではなかったことも新たな発見だった。「実家の経営は大規模。田んぼ一枚の生産性をいかに向上させるかなどを考えていますが、それとは違った農業の現場を知ったことはとてもよかった。ハンディキャップを抱えた人たちと共に働き農福連携の実践に触れたこともなかなかできない体験でした」と振り返る。
 2年目の研修は農産物のネット販売を行っているオイシックスの店舗。 販売体験はもちろん、同社と契約している生産者が店頭で消費者に自分の農産物の作り方や特徴、食べ方まで熱く語る姿に何度も触れた。
 「多くの生産者から農産物がいかに作られたのかしっかり情報発信をしていくことが大事だと言われました。作るだけではなく食べ方までサポートしていくことなどビジネスとして考えることもできるのではないかと思います」。

◆地域に根ざし全国とネットワーク

入善町青木の事務所前で 昨年春の就農から1年間は米づくりも西瓜づくりも基本はすべて体験した。JA青年部にも加入し農薬散布ヘリ組合のメンバーにもなって青年農業者の仲間とも交流している。
 入善ジャンボ西瓜は西瓜本来の味を大切にするため接ぎ木をしない自根栽培で手間がかかり、病害虫防除など管理が重要だという。母のさゆりさんから作業について1つ1つ説明を受けたが、「いわゆる暗黙知の部分もあるようで、そう簡単に分かるものでもなく、毎回毎回学んでいくしかない」という。地域にはかつて30人近くいた西瓜の栽培者が最近では10数人となっているなか、信義さんはブランド品を守り発展させたいと考えている。
 「歴史を土台にしながらも自分の代も新しいネットワークをつくって販売も広げていきたい」と話す。実際に子どもたちが集まるイベントなどで積極的に入善ジャンボ西瓜をPRしているという。
 和紀さんは「親としてみれば4年も大学に行ったのにまだ勉強するのかと思った」と振り返るが、日本農業経営大学校については「先進的な農業経営者や食品企業のトップ層に話を聞けるなどなかなかできない体験だと思いまます。何よりも20人の寮生と農業への夢を語りこれからの仲間が全国にできるというのは社会人になるうえでも非常に貴重ではないでしょうか」と評価する。
 入善町は農業後継者も多く法人化した家族経営が地域農業を引っ張っている。和紀さんは「基本は地域に根ざすしかない。米と田んぼを景観を守っているということに誇りを持ち、地域の農業者とのネットワークを大事にして農業を持続させていくことが大事」だと強調する。
 そのうえで信義さんをはじめ若い世代には「自分もそうだったようにこの経営をどうしようかときっと悩むことがある。新しい作物、販売形態への挑戦などきっと改革していくのだろうと期待もある。全国の仲間たちとの交流もきっと役立つと思う」と話す。
 信義さんは日本農業経営大学校2期生のなかで優秀賞を受賞した。「自分は行動派。全国の仲間とも交流を続けいつか自分なりに新しい経営を提案できればと思っています」と話した。
(写真上)(有)グリーン森下の森下信義さん(右)左は父の和紀さん。後ろに広がるのは立山連峰
(写真下)入善町青木の事務所前で

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