作業員被ばく事故 – 福井新聞

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もんじゅ廃炉、万全を期せ

2017年6月19日 午前7時30分

 【論説】事故は繰り返される。その多くがヒューマンファクター、つまり人的要因である。茨城県の日本原子力研究開発機構大洗研究開発センターで起きた作業員被ばく事故はどうだったか。

 「想定外」との声も聞かれるが、明らかにずさんな管理に起因する。同じ核燃料を扱う高速増殖原型炉もんじゅの廃炉作業に影響を与えるのは必至だ。

 事故はセンターの燃料研究棟で発生。プルトニウム酸化物などが入った貯蔵容器を5人の作業員が点検中だった。1人が放射性物質の飛散を防ぐ設備に手を差し入れ、ふたを開けた瞬間、中のビニールバッグが破裂し粉末が飛び散った。

 原子力機構によると、1人の肺から2万2千ベクレルのプルトニウム239が計測された。その後、放射線医学総合研究所はプルトニウムは計測されなかったと発表したが、一部の人からプルトニウムが変化したアメリシウムが計測されている。より詳細な調査を望みたい。

 数日で退院、事故を過小評価する向きもあるが、プルトニウムは長期間アルファ線を出し続けて細胞を傷つける。特に肺がんリスクの高さが懸念される。

 原因究明が本格化する中で、見えてきたのは安全管理を徹底すべき組織体制の弱さ、意識の欠如である。既に廃止が決まっている研究棟で起きたのも偶然ではあるまい。しかも、貯蔵容器に26年間、一度も点検されず放置状態。容器の中には成分不明の物質も入っており、事故の一因になった可能性が出ている。

 原子力規制委員会がこの2月に管理上の改善を求めていたにもかかわらず、適切な対応を怠った。機構側は点検方法を定めた要領もなかったと弁解している。

 規制委の田中俊一委員長は作業の「慣れ」を指摘するが、それこそヒューマンファクターの最たるもの。職員らが装着していた鼻と口を覆う半面マスクにしても、顔をずらせば隙間ができてしまうのだ。

 1999年に茨城県東海村で起きたジェー・シー・オー(JCO)東海事業所の臨界事故も「モラルハザード(倫理観の欠如)」が指摘された。工場の隅でウラン溶液をバケツで扱い2人が死亡。住民ら663人も被ばくし、国内原子力史上最悪の被害となった。安易な「慣れ」が常態化した違法作業が要因だ。

 原子力機構の事業はなし崩し的に整理、縮小され、所有89施設のうち44施設を廃止する計画だ。士気も低下し、モラルハザードが起きやすい状況といえる。

 廃炉措置が決定したもんじゅは、大量の機器点検漏れや相次ぐ保安規定違反が寿命を縮めた。規制委から「運転する資格がない」と痛罵された原子力機構が廃炉に取り組む。まさに研究開発機関としての存在意義が問われよう。

 地元敦賀市や隣接町などからは廃炉作業での事故を懸念する声が高まる。地元雇用にもつながるだけに、安全管理が生命線である。「マニュアルにない」「想定外」などという言い訳が通用するはずもない。

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