「巨大化」五輪に転機 先鞭つけたロスで再開催の因縁 – 日本経済新聞

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2024年と28年の夏季五輪の開催都市はパリとロサンゼルスを同時に選定することになった(7月11日にスイスのローザンヌで開かれたIOCの臨時総会)=ロイター

 国際オリンピック委員会(IOC)は7月11日にスイス・ローザンヌで開いた臨時総会で、2024年と28年の夏季五輪開催都市を9月の総会(ペルー・リマ)で同時選定することを決めた。24年開催に立候補しているパリとロサンゼルスをどちらの大会に振り分けるかについてIOCのバッハ会長は「3者で8月中に合意したい」と語る。ロサンゼルスが譲歩する構えを見せており、24年がパリ、28年がロサンゼルスとなりそうだ。五輪憲章の文言と食い違う「敗者なき配分」は、巨大化した五輪が曲がり角に至ったことを示している。

 パレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手団襲撃が起きた1972年ミュンヘン、開催経費の負債返済に30年を要した76年モントリオール。かつての五輪の危機を救ったのが84年大会唯一の立候補都市、ロサンゼルスだった。大会商標権を独占的に与えるマーケティング手法が奏功し、組織委員会は2億ドル超の黒字を残した。以後、五輪は「もうかるイベント」として蘇生し、商業化・肥大化に拍車がかかった。

 いま、ロスが再び対抗馬なしで28年開催都市の座を射止めようとしている現実は因縁めいている。84年大会を起点とする現代五輪は回り回って、再び危機に直面したといえるだろう。

 五輪憲章は「特別な事情を除き、開催都市は7年前に決める」と明記している。異例の判断に際し、バッハ会長は母国の格言を引用して強調した。「ドイツでは『屋根上の大きな鳥より手の中にある小さな鳥の方が良い』というが、今は大きな鳥が2羽も手の中にあるんだ。一方、屋根上にまだ何も見えない。この2羽を確保するのは素晴らしい機会だ」

 パリ、ロスとも過去に開催経験があり、都市力も申し分ない。一方でパリは08年と12年の招致で敗れ、米国も12年、16年と連敗した。三たび敗れればもう手を挙げてくれないかもしれない。そんな焦りもあったろう。

 過去の招致レースで立候補都市は、五輪精神の意義やスポーツが社会や経済にもたらす価値創造を競って宣伝し、レース自体が五輪とIOCのプロモーションだった。

 様相は一変した。22年冬季と24年夏季の招致では途中リタイアが続出。欧米では住民投票で招致に反対票が多く投じられた。テロやコスト高騰など五輪開催のリスクは高まり、目に見えない「レガシー」などの理想論は力を持ちえず、大都市さえ招致に二の足を踏むほど巨大になったことで五輪のイメージは額面割れを起こしつつある。

 バッハ会長は「あまりに多くの敗者を生む」と招致の見直しに意欲を見せる。ただ、それだけで五輪離れを食い止められるとは思えない。大きくなりすぎた五輪の改革と向き合うしか求心力回復はない。

(山口大介)

[日本経済新聞朝刊2017年7月13日付]

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