【寄稿】民泊と分譲マンションにおける消防法 マンション管理士 根本駿輔さん – 民泊大学

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今回は、民泊大学への特別寄稿として、民泊新法(住宅宿泊事業法)、特区民泊で重要なポイントとなっている分譲マンションにおける「消防設備」に関する部分について、マンション管理士で千葉県袖ケ浦市議会議員の根本駿輔さんに解説いただききましたのでご覧ください。

マンションで民泊を行おうとする際、消防上の取り扱いについて実は民泊住戸だけでなくマンション全体に及んで影響が生じます。特に分譲マンションにおいては住民から構成される管理組合との関係もあることから複雑化は避けられません。消防法にもマンション管理組合の仕組みにも絡むため非常にわかりにくい部分ですが、コンプライアンスやマンション住民との関係上重要な話ですので、必ずクリアしなければなりません。

消防庁の民泊に関する取扱いの通知

解説は次項以降で行いますが、まずは消防庁からの通知について紹介します。

消防庁の通達「住宅宿泊事業法に基づく届出住宅等に係る消防法令上の取扱いついて(消防予第330号 平成29年10月27日)」によると、家主不在型の民泊について「届出住宅については、消防法施行令別表第1(5)項イに掲げる防火対象物(旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの)又はその部分として取り扱うものとする」とあります。

また、昨年には「消防用設備等に係る執務資料について(消防予第163号 平成28年5月16日)」という通知もでており、誘導灯の設置について判断がされています。

これらが何を意味するのか、分譲マンションで民泊を考えた際にどのような影響が生じうるのか、解説していきます。


通知の内容はどういうことか

 消防法上、建物はその用途に応じて「飲食店」「病院」など35区分の分類がされています。用途によって火災リスクは異なりますので、その分類に従って各種消防設備などの規制の厳しさが異なるという仕組みになっています。

通常、マンションの消防法上の分類は「共同住宅」という扱いであり、「(5)項ロ」という分類にあたります。しかし、民泊として使う場合はその住戸について宿泊施設系の分類である、「(5)項イ」として扱われることに統一されました。

(5)

旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの

寄宿舎、下宿又は共同住宅

 さらに、マンション全体としては「共同住宅」でも、その中に「旅館、ホテル、宿泊所その他~」の用途が混在することになるため、1戸でも民泊を行う住戸があるとマンション全体としては「複合用途」という分類である「(16)項イ」という扱いになります。

(16)

複合用途防火対象物のうち、その一部が(1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの

イに掲げる複合用途防火対象物以外の複合用途防火対象物

 また、マンションは消防法上の特例を受けられる「特定共同住宅等」の定義にあたり、一定要件を満たすことで設備の省略ができるようになっています。しかし、特定共同住宅等と認められるには住宅または福祉施設系の用途のみという要件があるため、複合用途の建物は特定共同住宅等の扱いではなくなってしまいます。ただし、「(民泊を行っている)当該住戸が100㎡以下」「マンション全体の延べ面積の10%以下、かつ300㎡以下」という条件を満たしていればば、特定共同住宅等並みの特例を受けられることとされています。

 誘導灯については、マンション(共同住宅)の場合は地下・無窓階・11階以上には設置義務があるものの、10階までの部分には基本的に設置義務がありません。しかし、これも複合用途とみなされると全階で設置義務が生じることになり、非合理的な規制となりかねない恐れがありました。これを整理し、「防火水準が保たれているマンションであれば民泊を行っている住戸がある階だけ誘導灯を設置すればいい」としたものが通達内容です。


影響は?

・マンションでは建物全体の防火管理者を選任する必要がありますが、高さ31mを超えていたり複合用途のマンションであったりすると、各用途部分ごとに防火管理者を選任した上で、各防火管理者を束ねる「統括防火管理者」を選任する必要も別に選任する必要があります(各部分の防火管理者と重複でも可)。1戸でも民泊を行えば複合用途扱いになりますので、高さがないマンションでも統括防火管理者を新たに選任する必要がでてきます。さらには、消防署に提出する必要がある「消防計画」についても、民泊部分を含めた全体の消防計画を提出する必要も生じます。管理組合としてはやや手間が増えることになるでしょう。

・自動火災報知機について、設置義務の免除が受けられなくなります。しかし、大抵のマンションは既に設置されているので実際の影響はほとんどないものと思われます。

・民泊を行う階だけでいいと整理されたとはいえ、共用部に誘導灯の設置義務可能性が高いため、管理組合と調整しなければなりません。民泊を行わなければ設置義務がないのですから、民泊を行う所有者に費用負担を求めるということになるでしょう。また、所有者が費用負担をするので設置させてくれと言っても、「共用部分の変更」にあたる行為であるため、理事会にも許可権限がなくマンション全体の総会で承認の決議を受ける必要があります。加えて、厳密には共用部の電気代や消防設備点検の費用が増加する問題もあるため、イニシャルだけでなくその部分の負担も民泊ホスト持ちとなる可能性があります。

・特定共同住宅等ではなくなってしまうため、上記で説明した2点の要件を満たさなかった場合には、本来免除されていた消火栓などを増設しなければ認められなくなる可能性があります。この事態になると桁違いのコストが発生してくるため、非現実的とも言える状況です。さらに、2点目の要件が「マンション全体の延べ面積の10%以下、かつ300㎡以下」であることから、出遅れた人が民泊を始めようとしても「あなたまで認めると300㎡を超えるため、これ以上は許可できない」という早い者勝ちになってしまいかねません。

【重要】ここまで一般論として解説しましたが、消防法関係はケースバイケースの要素が強いため、管轄の消防署に個別の確認を必ずとってください。


その他、非常用照明について

  消防法上の話ではありませんが、似ている設備として住宅宿泊事業法には「非常用照明の設置義務」が定められています。「非常用照明」にはきちんとした定義条件があり、懐中電灯その他の簡易的なものでは許されず、「直接照明で床面1ルクス以上(LED・蛍光灯は2ルクス以上)の照度が確保できること」「常用電源が断たれた時、予備電源により即時点灯すること」「バッテリーで30分以上点灯」といった基準を満たすものを設置する必要があります。

 となると電気工事を伴う設置工事は不可避であり、イニシャルコストが発生します。また、「建築設備定期検査」という点検を6か月~1年ごと(特定行政庁の判断。東京都は1年ごと)に実施しなければならず、その点検費用もかかります。費用抑制のため管理組合の共用部分の点検実施に合わせてやってもらう手も考えられますが、日程は管理組合の都合と調整しなければなりません。

 なお、避難階での屋外出口または避難階への直通階段までの距離が短い場合(20mまたは30m)の居室部分における免除規定もありますが、専有部廊下は採光がとれる特殊な間取りでもない限り免れません。

まとめ

全体としてやや厳しすぎるような印象も受けますが、消防庁は今後の方針として「民泊の設置事例や相談事例を踏まえ、防火安全性を損なうことなく消防用設備等の設置合理化ができないか随時検討を行う。」としているため、合理的な方向に変更される可能性も十分にあります。民泊の開始を考える場合、または管理組合として民泊対応を検討する場合は、管轄の消防署や役所に確認をしながら進めましょう。

〈著書プロフィール〉根本駿輔(ねもと・しゅんすけ)
マンション管理士、宅地建物取引士、管理業務主任者。早稲田大学商学部卒。2004年より都内マンションデベロッパーに勤務し、営業とマンション管理に携わる。2016年退職。現在、千葉県袖ケ浦市議会議員として働く傍ら、千葉県マンション管理士会に所属。






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