【日本発!起業家の挑戦】シェアリング・エコノミー拡大を確信 – SankeiBiz

Home » シェアリングシティ » 【日本発!起業家の挑戦】シェアリング・エコノミー拡大を確信 – SankeiBiz
シェアリングシティ コメントはまだありません



 □エニタイムズ代表取締役・角田千佳氏に聞く

 サービスやモノ、場所を従来のように購入する代わりに共有・交換して利用する仕組みをシェアリング・エコノミーと呼ぶ。米国ではAirbnb、Uberはもちろん、日常のあらゆる場面でそれを仲介するサービスが一般的に利用されるようになっているが、日本では消費者のわずか1%程度しかサービスを利用したことがないと報告されているそうだ。

 この結果は極めて不可解だ。社会的、経済的な要素を見ると、日本の都市はシェアリング・エコノミー系の事業を運営するのに最も適しているように見える。しかし、いろいろな理由からこうしたスタートアップが主流になる例はほとんどみられない。

 野村証券、サイバーエージェントを経て2013年にANYTIMES(エニタイムズ、東京都港区)を創業し、シェアリング・エコノミー協会の理事も務める角田(つのだ)千佳氏にその秘密を解き明かしてもらった。

 ◆サービス経験者1%

 --どんなサービスを展開していますか

 「生活に関するスキルのシェアリング・プラットフォームです。家事やペットの世話、家具の組み立て、英会話レッスンなどを近所で提供したい人と受けたい人をつなぎます」

 --サービスの範囲がかなり広いですね。一番人気があるのはどんなサービスですか

 「最も人気の高いカテゴリーは家事で、その次が料理です。料金はさまざまですが、1時間2000円程度で、エニタイムズが15%のシステム利用料をいただきます。利用者にはサービスの受け手だけでなく提供者にもなってもらいたいと考えているため、サービスの領域は幅広くなっています」

 --マーケットプレイス(インターネット上の取引市場)の大半では、買い手の数が売り手の数を大きく上回っています。利用者に売り手になってもらうのは難しかったですか

 「プラットフォームの真価が試されます。エニタイムズでは、サービス提供者の数という指標を最も重要な指標の一つとして記録・分析しています。ほとんどの人は最初はただサービスを利用するために登録します。たとえば、ペットを預かってほしいなどの希望があってサービスを利用します。そうしてサービスを使っていただけるのはもちろん好ましいことですが、時間の経過とともにプラットフォームに慣れ親しんだ利用者には自分の得意分野を生かしてサービスの提供者になってもらうように促します。実際に多くの人が提供者側にもなり、それによってシェアリングのコミュニティーが密になっていきます」

 --角田さんはプログラマーでもデザイナーでもありませんよね。どうやってエニタイムズを起業し、サービスを始めたんですか

 「創業1年目は100%クラウドソーシングサービスに頼っていました。会社を始める方法としてはとても難しいのでお勧めしません。私にとっても簡単ではありませんでしたし、開発を担当したプログラマーの方にとってもやりにくい所があったと思いますが、当時私には他に方法がありませんでした。1年経ってようやくプログラマーやデザイナーを採用することができ、プラットフォームの展開がよりスムーズに進むようになりました」

 --マーケットプレイスの構築には大きく分けて2つの戦略があります。まずは領域を絞り込んでたとえばペットの世話だけを取り扱うという方向性。もう一つはエニタイムズのように領域を広げて日常のあらゆるサービスを取り扱うという方向性ですが、ほとんどのマーケットプレイスは前者を目指します。サービス領域を広げた理由は?

 「私たちが注力しているのは、コミュニティーのプラットフォームになることです。家事サービスやペットの世話サービス専用のプラットフォームを作りたいわけではないのです。ご近所同士のコミュニティー作りを目指しているので、いろいろなサービスを提供する必要があります」

 --クラウドソーシングのプラットフォームはほとんどが国内専用で、国境をまたいで成功している事例は数えるほどしかありません。言葉の壁が主な問題でしょうか

 「言語はもちろん一つの障壁ではありますが、私は日本の労働市場が他とは違っていることが主な原因だと思います。日本国内の状況に固執してそれに特化したサービスを作り上げることもできますが、そうすると世界進出が難しくなることが予想されます」

 --日本の労働市場は他とどう違うのですか

 「大企業で正社員として働くことが良しとされ、終身雇用制度もいまだ崩壊したとはいえません。理想的な働き方に関して、ステレオタイプが存在します。ここ10年ぐらいでフリーランスという働き方の人気は以前より高まっていますが、副業として取り組む人を除けば労働市場に占める割合は依然少なく、東京やその他の都市部に集中しています」

 --フリーランスが都市に多い理由は? フリーランスとして働いたりクラウドソーシングサービスを利用したりすると、どこでも働けるのが魅力かと思ったのですが

 「それが理想ですよね。物価が安い地方に住んで、報酬の高い都市部の企業からスキルに応じた対価が得られればいいのですが、実際にはそう簡単なことではありません。まず、プログラミングやデザインの仕事でさえ、対面で会って仕事を進めた方が生産性が高いのが現実です。また、フリーランサーのほとんどがクラウドソーシングサービスだけに頼って収入を得ているわけではありません。求人の多い都市に住んで、就職できる機会を探りたい人が多いです。プログラマーやデザイナーに関して言えば、年齢が低い傾向にあるので、都市に住むのが好まれるということもあります。地域ごとに文化の違いもあります」

 ◆もう少し時間必要

 --企業文化の違いですか

 「主に人の違いです。都市に住む人は新しい物をすぐに試してみようとします。ですから、クラウドソーシングサービスへの登録も早いですが、地方の人は一般的に保守傾向が強く、サービスへの登録も少し遅くなります。ですから、これまで大都市圏での利用者が多かったのは自然なことだと思っています。だんだんとより広い地域で受け入れられていくと思います」

 --シェアリング・エコノミーが日本でゆっくりとしか広がっていないのはなぜですか。文化的な背景があると思いますか

 「たしかに、米国ではおよそ3割の人がシェアリング・エコノミーに属するサービスを利用したことがあると回答しているのに対して、日本ではその割合がわずか1%とも言われています。しかし、私は文化的な背景が原因でサービスが広がらないとは考えていません。日本では少し時間がかかるだけです」

 --国の規制がシェアリング・エコノミーの拡大を抑えているとは思いませんか

 「間接的にはそうですね。民泊を始めとして宿泊、観光、介護、保育などに関連してあらゆるサービスを提供するときに特別な許可や資格を得なければならない法律があります。個人がサービスを提供したいときには許可を取りやすくすべきだと思います。少しずつ規制緩和が進んでいますから、もう少し時間が必要なのだと思います」

                  ◇

 いろいろな意味で、日本の都市はシェアリング・エコノミーを実践するスタートアップにとっては理想的な環境だ。人口密度が高く、マンションは狭いので借りられる物があるならば購入するよりも共有する方が経済的だ。また、日本は一般的な信用のレベルが高い。他人に対して敬意を払い、他人の物を丁寧に扱う文化は、世界のどの国とも比べ物にならないほどだ。

 しかしながら、シェアリング・エコノミーが人々の暮らしに定着したとは言い難い。人口密度や文化的背景、そして規制緩和などがその拡大を後押ししても良さそうなのに、1%の人しかサービスを利用したことがなく、まだそのコンセプトをよく知らない人が多いのは驚きだ。

 とはいえ、これだけの条件が整い、革新的な創業者が新しいサービスを提供し始めている。角田氏が言う通り、その拡大は時間の問題と言っていいだろう。

 文:ティム・ロメロ

 訳:堀まどか

                  ◇

【プロフィル】ティム・ロメロ

 米国出身。東京に拠点を置き、起業家として活躍。20年以上前に来日し、以来複数の会社を立ち上げ、売却。“Disrupting Japan”(日本をディスラプトする)と題するポッドキャストを主催するほか、起業家のメンター及び投資家としても日本のスタートアップコミュニティーに深く関与する。公式ホームページ=http://www.t3.org、ポッドキャスト=http://www.disruptingjapan.com/






コメントを残す