気候変動への企業の適応 まずリスクの所在確認を – 日本経済新聞

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 2月20日、気候変動適応法案が閣議決定された。パリ協定は産業革命前からの温度上昇をセ氏2度以内に抑えることを目指すが、順調に対策が進んでも気候変動は進む。政府や自治体はコメや農作物の品種改良、果樹などの最適地の見直し、台風や豪雨など自然災害やマラリアやデング熱など熱帯性感染症などの個別対策に取り組んでいるが、適応法により包括的な取り組みへと一層強化されるだろう。

 ハードディスク工場の被災で世界的なパソコン供給不足をもたらした2011年のタイの大規模洪水など、自然災害は毎年のように民間事業でも発生している。気候変動による自然災害の激甚化の影響を受けるのは民間事業も同じだ。

 しかし、気候変動法は対策を企業に義務づけてはいない。事業の内容や立地によって影響度合いは一律ではなく規制化は難しいからであり、まずは自主的な取り組みからだろう。

 20カ国・地域(G20)の金融安定化委員会の要請でつくられた気候変動財務情報開示タスクフォース(TCFD)は気候変動による企業経営や金融市場への悪影響を避けるために企業にリスクの把握や対策の状況を自主的に公開することを求めている。

 3月に米石油大手シェブロンが気候変動による事業への影響とその対策について四十数ページの包括的な報告書を発表したが、これはTCFDの提言を踏まえたものだ。ハリケーンによる製油所被害などの過去に実際に起きた災害経験をもとにした製油所周辺の堤防建設などの対策を紹介している。まずは企業にリスクへの「気づき」を求めるのがTCFDの趣旨だとすれば記載量は少ないものの十分な対応だ。

 しかし、二酸化炭素(CO2)排出規制への対応に比べると、気候変動による事業への影響を分析し、情報開示をする企業の数はまだまだ少ないのが現実だ。

 自然災害による被害発生の確率と発生した場合の影響の大きさからリスクを計算し、事業の計画や施設の設計に織り込むことはインフラや物流では普通だ。また被災時の対応や復旧方法など事業継続の準備も当然だ。台風やサイクロンの巨大化による高潮被害の拡大などの分析ツールも研究から実用の段階となってきた。気候変動による外部環境変化に対応した事業継続計画(BCP)など適応策を作るための基礎は既にできている。

 気候変動の影響が深刻化するのは30年以降ともいわれる。しかし自然災害は毎年のように発生し、また直接、あるいはサプライチェーンを通じた被害は増えている。企業には雇用を守り、顧客へのサービスを継続し、また株主に配当するなどステークホルダーの多様な要求に応えなければならない。それを考えれば、気候変動の時代にも持続的に事業を行うための長期戦略は欠かせない。

 発生する気候変動の種類、時期、事業の立地や性格は異なり、全ての企業で本格的な検討と対策が必要というわけではない。しかし、気候変動に対して非常に脆弱なのか、それほどでもないのかはあらかじめ知っておくべきだろう。まずは事業ごとに気候変動のリスクがどこにあるかを確認することから始めてはどうだろうか。

[日経産業新聞2018年3月16日付]






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