上場誘致の市場間競争は投資家目線で – 日本経済新聞

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 成長期待の大きい有望な企業に株式を上場してもらおうと、世界の取引所が誘致を競っている。ここにきて目につくのは、創業者や一部の大株主に支配権が集中したままで上場する動きだ。取引所が上場ルールそのものを緩める流れも世界的に強まっている。

 こうした企業は業績が好調なときはいいが、いざ経営に問題が起きても、外部の株主の声が届きにくい構図に陥る。取引所はいたずらに規律を緩めることなく、一般の投資家の権利まで広く配慮して、企業統治がしっかり機能する市場の運営が必要だ。

 米国で3日、ニューヨーク証券取引所に上場した音楽配信会社、スポティファイ・テクノロジーは異例だった。新たな資金調達はせず、株主構成をそのままで直接上場するという手法をとった。上場後の一定期間は保有株を手放せないといった制限もかからず、既存の株主はすぐに現金化できた。企業側に有利な上場だ。

 シンガポールや香港などアジアの取引所でも、企業に選ばれるように上場ルールを緩めようとしている。議決権でいえば、1株1票の原則を崩して、経営者らに議決権が集中したかたちで上場を許す動きだ。中国のアリババ集団が上場先に米国を選んだことが、緩和に傾く起点になったとされる。

 もちろん、優れた経営者が率いる新興企業の成長を後押しするのに、こうした仕組みが有益な場面はあるだろう。しかし米国でも、その後の業績悪化や不祥事に直面しても経営への監視が効かず、株価の急落を何度もみてきた。しわ寄せを食うのは一般の投資家だ。

 日本も会社法改正を経て、議決権に差をつけるなどの仕組みを取りやすくなっている。それは本当に必要かつ妥当であることが大前提になる。通常の株式と区別がつく情報の開示も欠かせない。

 取引所は健全な市場運営という重い役割がある。自身が利益を上げる必要があるとはいえ、上場を誘致する競争が、質を落とす競争になってはならない。東京証券取引所も、親会社の保有比率が高いまま、子会社が上場する「親子上場」の多さはなお残る課題だ。

 上場企業の魅力を高めることが世界のマネーを呼び込むことにつながる。迅速かつ確実に取引できるインフラも含め、安心して売買できるからこそ参加者に厚みが増す。投資家目線で生みだす好循環が市場間競争に勝つ条件だろう。






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