名産のチーズ・焼酎… 数千円でオーナーに – 日本経済新聞

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 全国各地の名産品の「オーナー」になる消費者が増えてきた。ネットで栽培や加工の進捗状況が報告されたり、果樹に名札が付いたり、オーナーならではの楽しみがあるからだ。

 東京都港区の会社員、Aさん(34)は、北海道むかわ町の「ASUKAのチーズ工房」から取り寄せた長期熟成ホールチーズで晩酌を楽しむ。「絞りたての生乳と塩だけで、こんなに深い味わいと香りが生まれるなんて」と感動するAさんだが、このチーズに思いを寄せる理由はそれだけではない。

 実はAさんは同工房の募集に応じてチーズに7150円を出資したオーナー。自分の1キロのホールチーズが食卓に届く前からインターネットで熟成の様子を見守ってきた。温度や湿度を管理しながら2日に1回、表面に付いたカビをから拭きして反転させる手作りチーズ。「やがて自分が口にするものが、どこでどのように作られているのか、その過程を見るのは得がたい体験だった」。

 Aさんはukka(東京・千代田)が運営する名産品のオーナー制度の専門サイト「OWNERS」で同工房を見つけた。沖縄のマンゴーやパイナップル、伊豆半島の伊勢エビ、北海道のチーズ――。消費者は「登録費」を支払えば、オーナーになれる。ukkaの谷川佳代表によると、季節などによって入れ替えつつ、常時10件程度から選べるようにしている。

 同サイトには産地の歴史や風土、成育や収穫方法へのこだわりなどを掲載。さらにオーナーになると、具体的な生育状況などが伝えられる。谷川代表は「ネット経由で注文して取り寄せるだけなら自動販売機とあまり変わらない。旬まで待つ楽しみも味わってほしい」と話す。天候不順で収穫できない場合などは代替品の提供か返金になる。

 ふるさと納税の「返礼品」にもオーナー制度がある。ふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」では、高知県のポンカンや長野県のリンゴなどを紹介。島根県の出雲そばのオーナーになると種まきから刈り取り、そば打ちまで体験できる。いずれも税制上、寄付した金額から2000円を差し引いた分が所得税や住民税から控除できる。

 愛媛県は17年、県内のオーナー制度を紹介する専用サイトを開設した。オーナーが訪問したときの受け入れ体制は十分か、栽培方法が適切か、「出資」などの金額が妥当かなどをチェック。一定基準を満たした生産者だけが登録できる仕組みだ。契約はオーナーと生産者が直接結ぶが、同県は「県のお墨付きの生産者という安心感もあるのでは」(農政課)とみている。

 最近、全国的に目立つのが棚田のオーナー制度だ。NPO法人の棚田ネットワーク(東京・新宿)によると「年間3万円ほどで6畳から8畳くらいの区画のオーナーになり、おおむね20~30キロの収穫が得られる場合が多い」。コメのほかに現地産の野菜などが特典で付くこともある。スーパーで買うコメでは味わえない体験の対価、景観保存のための寄付を含めて考えれば高くはないだろう。

産地には「オーナー札」も(高知県須崎市提供)

 加工品では酒類も人気があるようだ。高知県四万十町の酒蔵「無手無冠」が運営する「四万十川焼酎銀行」は、栗焼酎を壺(つぼ)ごと買い、そのまま預けて熟成できる仕組み。「定期預金」コースを選ぶと満期時に金利として小瓶がもらえる。預かり証代わりに「通帳」も発行されるこだわりようだ。

 都会生まれの人は、実家から旬の名産品が送られてくる友人をうらやましく思ったことがあるのではないか。オーナー制度を利用すれば、全国どこでも気に入ったところを「ふるさと」にできる。リンゴ、ミカンといった果樹のオーナー制度などは、自分の名前を書いた「オーナー札」の付いた木から自分の手で収穫できるから、オーナー気分もひとしおだろう。

(嘉悦健太)

[NIKKEIプラス1 2018年4月7日付]






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