長野・木曽の芸術祭 地域の課題、芸術で表す – 日本経済新聞

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 長野県木曽地域の課題を作品を通して考える。そんな芸術祭を地元の芸術家が中心となって6月に開く。「獣」をテーマに、動物に関する作品を美術館や公共施設で展示し、害獣駆除が抱える問題を提起する。住民も芸術家と思いを一つにして、地域に芸術を根付かせようと汗をかく。

バザールでは芸術家と住民が作品を展示する(昨年の様子、木曽町)

バザールでは芸術家と住民が作品を展示する(昨年の様子、木曽町)

 芸術祭の名称は「木曽ペインティングス」で、2017年6月に木曽町と上松町で1回目を開いた。18年の会期は6月6~21日で、新たに木祖村が会場に加わる。画家やデザイナーをはじめ34人の芸術家が、獣をテーマにした作品を木曽路美術館(上松町)や宮ノ越宿本陣(木曽町)など3市町村の8施設で展示する。開催には長野県の地域づくり支援金を活用する。

 芸術家は会期の2週間ほど前から木曽に滞在し、そこで得た発想をもとに作品を作る。実行委員会の委員長を務める画家の岩熊大也さんは「芸術家には外で作ったものを持ってくるのではなく、木曽で住民や自然と触れ合い作品を制作してほしい」と語る。

 木曽ペインティングスの特徴は地域や住民との距離の近さだ。住民が加わるイベントは多岐にわたる。公共施設で開く「バザール」には芸術家と住民が共にアクセサリー、家具を販売する。17年はカブトムシの出品などもあり、地域の特色を生かした異空間の市場を作り上げた。

 地元の小学生と芸術家が協力しあい、旗に志を書き込んだ旗揚げイベントも開く。酒造店や和菓子店も芸術家に協力し、キツネや熊といった獣をテーマにしたラベルの商品を期間限定で販売する。

 今回「獣」をテーマにした背景には、木曽で活動する岩熊さんの強い思いがある。「獣害対策で駆除される獣は、ほとんどが活用されずに処分される。一方で筆に使う獣毛や画材は輸入に頼っている。地域で忘れられている資源が芸術で循環していくことを示したい」。芸術祭には獣毛や皮を画材として活用した作品を展示する。

 岩熊さんは東京生まれの東京育ち。画家として各地の企画展に作品を出品していたが、15年に木曽町に移り住んだ。「芸術は作品の愛好家がいる都会でしかできないと思われている。地方独自で住民が誇りに思える芸術が存在することを示したい」と木曽で作品を制作する意義を語る。

 17年の1回目は中山道を通じた東西の芸術の出合いをコンセプトに芸術家15人が参加した。1回目から参加する美術作家の高沢日美子さんは「自治体主導ではなく芸術家自身がイベントのテーマを企画し、手作りで運営することに魅力を感じた」と語る。想定を上回る2500人が参加した。

 19年のテーマは空き家問題を考えている。岩熊さんは「空き家の増加は全国共通の課題だ。地域の問題を芸術で表現し、解決の糸口を探りたい」と語る。(結城立浩)






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