U・Iターン/3 商社マンから5代目蔵元に 水戸部朝信さん 山形の酒、国内外に – 毎日新聞

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自社産米、風味豊か

 漆喰(しっくい)の壁が美しく際立つ蔵に一歩入ると、ひんやりとする。室温は3~7度。日本酒「山形正宗(まさむね)」を造る山形県天童市の「水戸部酒造」の社長、水戸部朝信さん(45)が、たるの中の温度が書かれた黒板を見ながら「徐々に上げていき、しばらく維持して活発に発酵させてから下げていく。酒の温度管理は飛行機と同じなんですよ」と教えてくれた。

 約20年前までは商社マンだった。子供のころから、世界を舞台に働くことが夢で「山に囲まれた山形の閉塞(へいそく)感から解放されたかった」。山形を離れて一橋大経済学部に進学し、卒業後は総合商社の丸紅に入社。財務を担当し、休みなく働いた。

 3~4年たったころ、父陽一さん(70)からの電話が鳴った。後継ぎがいない家業の窮状を訴え、「もし継がないなら、お前の子供が継げるようになるまで俺がやれるだけ頑張る」と話す父の様子に並々ならぬ決意を感じ、退社して家業を継ぐことを決断した。

 2000年から県工業技術センターで計1年間、酒造りを学んだ。1898年創業の老舗酒蔵の5代目蔵元として、試行錯誤しながらも新たな取り組みを次々と始めた。

 04年からは酒米の自社栽培を始めた。原料に対する知識や興味を高めることはメーカーとしての責務と考えたからだ。昨年は8ヘクタールで山形生まれの酒米「出羽燦々(さんさん)」を中心に生産した。最初は完全無農薬を目指そうとしたが、除草作業の大変さを知り、今は減農薬で作っている。10年からは、醸造用アルコールを添加しない純米酒に全て切り替えた。コメの味がストレートに出やすく、豊かな風味になった。

 県内中心だった販路も県外に拡大した。卸売店を通して約300店の小売店に納品していたが、県内の他の酒造会社の経営者に紹介してもらいながら取引を拡大。現在は卸売店を通さず直接、関東や関西などの小売店60店に納品する。

 陽一さんは水戸部さんの決める方向性に反対はせず、自由にやらせてくれた。「今となっては、父にしてやられました」と振り返る。「きっと山形の大学を出てすぐに継いでいたら、全く違うやり方をとっていたかもしれない」と語る。

 山形を、ワインで有名なフランスのブルゴーニュのようにすることを夢見る。「海外でも『山形の酒はおいしいね』と敬意と愛情を持って飲んでもらえるようにしたい。まだまだマーケットは伸びる。ライバルと切磋琢磨(せっさたくま)しながら競争していきたい」【野間口陽】=随時掲載


 ■メモ

水戸部酒造

 1898(明治31)年創業。年間製造量は約800石(約14万4000リットル)。ラインアップは15種類ほどで、「山形正宗」のロゴは2002年にデザインを刷新した。従業員数は16人。水戸部さんの生ハム好きが高じ、現在はイタリア産生ハムの輸入販売も手がける。山形県天童市原町7。電話は023・653・2131。







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